電動歯ブラシは普通の歯ブラシに比べて効果的か?
電動歯ブラシのほうが若干効果的だが、使い方が重要
統計的には、電動歯ブラシは普通の歯ブラシよりも若干プラーク(歯垢)の除去効果が高く、歯肉炎も減少させるという結果が出ています。
ただし、電動歯ブラシを使っているかどうか?ということよりも、「適切に使用できているかどうか?」ということのほうがより重要なので、担当医や歯科衛生士に使い方のチェックをしてもらうことをお勧めします。 |
電動歯ブラシは普通の歯ブラシよりも"いい"のか?
電動歯ブラシが一般的になって久しい。いまではすっかり日本人の生活の中に取り入れられていると言っても過言ではない。家電の量販店などを訪れると専用のコーナーもあり、今後もますます新しい製品が開発されてくると思う。
患者さんたちからよく頂く質問の一つに「電動歯ブラシは普通の歯ブラシに比べていいのでしょうか?」という質問がある。本稿ではこの「良い」を「より汚れを落とす」と解釈してこれまでの科学的な根拠を探ってみたい。
患者さんたちからよく頂く質問の一つに「電動歯ブラシは普通の歯ブラシに比べていいのでしょうか?」という質問がある。本稿ではこの「良い」を「より汚れを落とす」と解釈してこれまでの科学的な根拠を探ってみたい。
そもそも、歯ブラシを使う目的とは?
電動歯ブラシに限らず、そもそも歯ブラシを使う目的は何でしょうか?
その目的は歯の表面に付着しているプラーク(いわゆる歯垢、デンタルバイオフィルムとも呼ばれる)を落とすことです。
プラークは虫歯や歯周病の原因となる細菌の塊です。その性状は言い換えれば“ヌメリ”にとても似ています。浴槽などにこびりついたヌメリを落とすには、皆さんはどうしていますか?先端の尖った器具を使って落としますか?それよりも適切な毛先がついたブラシを使って落としていたほうが効率的であることは感覚的に理解できると思います。したがって、プラークを爪楊枝で落としていくよりも、歯ブラシで落としていく方が効率的で効果的なのです。
その目的は歯の表面に付着しているプラーク(いわゆる歯垢、デンタルバイオフィルムとも呼ばれる)を落とすことです。
プラークは虫歯や歯周病の原因となる細菌の塊です。その性状は言い換えれば“ヌメリ”にとても似ています。浴槽などにこびりついたヌメリを落とすには、皆さんはどうしていますか?先端の尖った器具を使って落としますか?それよりも適切な毛先がついたブラシを使って落としていたほうが効率的であることは感覚的に理解できると思います。したがって、プラークを爪楊枝で落としていくよりも、歯ブラシで落としていく方が効率的で効果的なのです。
電動歯ブラシと普通の歯ブラシの歯垢除去能力の比較
さて、電動歯ブラシといっても数多くの種類があります。よく皆さんがお店で見かけるものは大別して「回転式」と「音波式」の2つがあります。今回は2つの方式の違いを探求していくよりは、これらを「電動歯ブラシ」という大きな枠組みの中でお話していこうと思います。ちなみにこれらを比較研究した論文では製品間の差はなかったようです。
電動歯ブラシと普通の歯ブラシの違い、とくに清掃結果に関して研究した論文はこれまでにも多数出版されています。ただこういった類の研究の難しさとして、使用する個人の使い方の上手下手が、歯ブラシの結果を隠してしまうことです。そういった場合、研究者が患者さんの口の中で歯ブラシや電動歯ブラシをつかって歯垢を落とすことが必要になります。そうすることにより、個人の能力の差の影響は最小限に抑えらます。ただしそれは理想的な環境下での実験ですので、では実際に患者さんに使ってもらってどの程度か?も重要なデータとなります。
オランダの研究グループはそういったことを踏まえて、電動歯ブラシのプラークの除去能力について、普通の歯ブラシと比較しました。さきほど指摘した理想の環境と実際の患者さんの使用具合についてきちんと踏まえて調べてみたところ、研究者が実際に患者さんの口の中で使った場合は電動歯ブラシを使った方が、ほんの僅かですがプラークの除去力が高かったというものでした。しかし、患者さん自身に使ってもらった場合はその差は顕著ではありませんでした。そこでさらに、使用法を指導した後では、電動歯ブラシを使った場合の方が清掃力は高かったという結果が出ました。つまり、正しい使い方を学べば僅かではありますが、電動歯ブラシに軍配が上がったのです。つまりポイントは「きちんと使う」ということですね。
【研究者が患者さんの口の中で電動歯ブラシを使った場合】
【患者さん自身に電動歯ブラシを使ってもらった場合】
【電動歯ブラシの使い方を指導後に、患者さん自身に使ってもらった場合】
電動歯ブラシと普通の歯ブラシの違い、とくに清掃結果に関して研究した論文はこれまでにも多数出版されています。ただこういった類の研究の難しさとして、使用する個人の使い方の上手下手が、歯ブラシの結果を隠してしまうことです。そういった場合、研究者が患者さんの口の中で歯ブラシや電動歯ブラシをつかって歯垢を落とすことが必要になります。そうすることにより、個人の能力の差の影響は最小限に抑えらます。ただしそれは理想的な環境下での実験ですので、では実際に患者さんに使ってもらってどの程度か?も重要なデータとなります。
オランダの研究グループはそういったことを踏まえて、電動歯ブラシのプラークの除去能力について、普通の歯ブラシと比較しました。さきほど指摘した理想の環境と実際の患者さんの使用具合についてきちんと踏まえて調べてみたところ、研究者が実際に患者さんの口の中で使った場合は電動歯ブラシを使った方が、ほんの僅かですがプラークの除去力が高かったというものでした。しかし、患者さん自身に使ってもらった場合はその差は顕著ではありませんでした。そこでさらに、使用法を指導した後では、電動歯ブラシを使った場合の方が清掃力は高かったという結果が出ました。つまり、正しい使い方を学べば僅かではありますが、電動歯ブラシに軍配が上がったのです。つまりポイントは「きちんと使う」ということですね。
【研究者が患者さんの口の中で電動歯ブラシを使った場合】
【患者さん自身に電動歯ブラシを使ってもらった場合】
【電動歯ブラシの使い方を指導後に、患者さん自身に使ってもらった場合】
- 研究者が実際に患者さんの口の中で使った場合は、電動歯ブラシの方がわずかにプラーク除去力が高かった
- しかし、患者さん自身に使ってもらった場合はその差は顕著では無かった
- 患者さんに電動歯ブラシの使用法を指導した後では、電動歯ブラシの方が清掃力は高かった
- つまり、「正しく、きちんと使えているかどうか」が重要
電動歯ブラシは "魔法の機械" ではない
歯を磨くことは習慣化されると非常に強力な予防の手段になります。予防歯科の根幹をなすもので、我々現場の専門家はいかに歯磨きを習慣化してもらうかにいつも悩んでおります。
フィンランドのグループは電動歯ブラシを12か月間使用した場合の、磨き残しの状態についての論文を発表しました。この研究でも電動歯ブラシを使用している患者グループは普通の歯ブラシを使用しているグループよりも(ほんの僅かではありますが)、残っているプラークが少なかったようです。ただしデータをよく読むと、どちらのグループも前歯よりも奥歯に磨き残しが多く、そして前歯でさえ電動歯ブラシでは磨き残しがあります。やはり完璧なお掃除は電動歯ブラシを使用しても難しいということがわかります。
さらに新しい論文では4人の研究者の評価の違いを検証した研究の中で、電動歯ブラシと普通の歯ブラシの効果の違いを4人の研究者によって評価が変わるか?というテーマで研究がされましたが、その中でも電動歯ブラシの優位性が示されています。また世界中の医学論文を吟味してその情報を発信しているコクラン共同計画のライブラリーでも、短期及び長期に渡る電動歯ブラシの使用は、普通の歯ブラシよりも効果は高いとしています。
しかし歯と歯の間の清掃状態に関しては、電動歯ブラシと普通の歯ブラシ、いずれも磨き残しが多く、その差は小さいという結果も報告されています。したがって電動歯ブラシは普通の歯ブラシでが届かない部位にも届くという魔法の器械というわけでもなさそうです。
フィンランドのグループは電動歯ブラシを12か月間使用した場合の、磨き残しの状態についての論文を発表しました。この研究でも電動歯ブラシを使用している患者グループは普通の歯ブラシを使用しているグループよりも(ほんの僅かではありますが)、残っているプラークが少なかったようです。ただしデータをよく読むと、どちらのグループも前歯よりも奥歯に磨き残しが多く、そして前歯でさえ電動歯ブラシでは磨き残しがあります。やはり完璧なお掃除は電動歯ブラシを使用しても難しいということがわかります。
さらに新しい論文では4人の研究者の評価の違いを検証した研究の中で、電動歯ブラシと普通の歯ブラシの効果の違いを4人の研究者によって評価が変わるか?というテーマで研究がされましたが、その中でも電動歯ブラシの優位性が示されています。また世界中の医学論文を吟味してその情報を発信しているコクラン共同計画のライブラリーでも、短期及び長期に渡る電動歯ブラシの使用は、普通の歯ブラシよりも効果は高いとしています。
しかし歯と歯の間の清掃状態に関しては、電動歯ブラシと普通の歯ブラシ、いずれも磨き残しが多く、その差は小さいという結果も報告されています。したがって電動歯ブラシは普通の歯ブラシでが届かない部位にも届くという魔法の器械というわけでもなさそうです。
- 多くの研究で、電動歯ブラシは普通の歯ブラシより効果的であるというデータが出ている
- ただしその差はわずかであり、電動歯ブラシを使用した場合でも磨き残しは多く見られた
執筆者からのコメント
現在の研究レベルでの結論では電動歯ブラシに肯定的な結果がでました。しかし肝心なのは誰が使用するか?そして適切に使用しているか?という問題です。したがって電動歯ブラシを使用している方、もしくはこれから使用したいと思っている方は是非主治医や担当の歯科衛生士の方に一度使い方をチェックしてもらうことを強くお勧めします。
今回紹介した論文などで示されているプラークの清掃能力の差は統計学的に差が確認されたということだけです。しかし、それがどの程度使用している消費者の利益につながるかは残念ながら解りません。ただし電動歯ブラシの明確は利点は「時間」です。忙しい現代人にとっては電動歯ブラシを上手く使うと時間的なメリットは大きいかもしれません。したがって現時点では電動歯ブラシは必ず使用しなくてはならないものというよりは、使いたい人が使っても構わないということが言えると思います。
今回紹介した論文などで示されているプラークの清掃能力の差は統計学的に差が確認されたということだけです。しかし、それがどの程度使用している消費者の利益につながるかは残念ながら解りません。ただし電動歯ブラシの明確は利点は「時間」です。忙しい現代人にとっては電動歯ブラシを上手く使うと時間的なメリットは大きいかもしれません。したがって現時点では電動歯ブラシは必ず使用しなくてはならないものというよりは、使いたい人が使っても構わないということが言えると思います。
参考文献
The plaque-removing efficacy of an oscillating/rotating toothbrush. A short-term study.
van der Weijden GA, Danser MM, Nijboer A, Timmerman MF, van der Velden U.
J Clin Periodontol. 1993 Apr;20(4):273-8.
A comparative clinical investigation of the safety and efficacy of an oscillating/rotating electric toothbrush and a sonic toothbrush.
Grossman E, Dembling W, Proskin HM.
J Clin Dent. 1995;6(1):108-12.
Assessment of the effect of an oscillating/rotating electric toothbrush on oral health. A 12-month longitudinal study.
Ainamo J, Xie Q, Ainamo A, Kallio P.
J Clin Periodontol. 1997 Jan;24(1):28-33.
Powered versus manual toothbrushing for oral health.
Yaacob M1, Worthington HV, Deacon SA, Deery C, Walmsley AD, Robinson PG, Glenny AM.
Cochrane Database Syst Rev. 2014 Jun 17;(6):CD002281. doi:10.1002/14651858.CD002281.pub3.
A randomized clinical trial comparing plaque removal efficacy of an oscillating-rotating power toothbrush to a manual toothbrush by multiple examiners.
Kurtz B1, Reise M1, Klukowska M2, Grender JM3, Timm H4, Sigusch BW1.
Int J Dent Hyg. 2016 Nov;14(4):278-283. doi: 10.1111/idh.12225. Epub 2016 May 6.
van der Weijden GA, Danser MM, Nijboer A, Timmerman MF, van der Velden U.
J Clin Periodontol. 1993 Apr;20(4):273-8.
A comparative clinical investigation of the safety and efficacy of an oscillating/rotating electric toothbrush and a sonic toothbrush.
Grossman E, Dembling W, Proskin HM.
J Clin Dent. 1995;6(1):108-12.
Assessment of the effect of an oscillating/rotating electric toothbrush on oral health. A 12-month longitudinal study.
Ainamo J, Xie Q, Ainamo A, Kallio P.
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Powered versus manual toothbrushing for oral health.
Yaacob M1, Worthington HV, Deacon SA, Deery C, Walmsley AD, Robinson PG, Glenny AM.
Cochrane Database Syst Rev. 2014 Jun 17;(6):CD002281. doi:10.1002/14651858.CD002281.pub3.
A randomized clinical trial comparing plaque removal efficacy of an oscillating-rotating power toothbrush to a manual toothbrush by multiple examiners.
Kurtz B1, Reise M1, Klukowska M2, Grender JM3, Timm H4, Sigusch BW1.
Int J Dent Hyg. 2016 Nov;14(4):278-283. doi: 10.1111/idh.12225. Epub 2016 May 6.
この記事の執筆者
Junichi Ohno
大野 純一
歯科医師、スウェーデン認定歯周病専門医
大野歯科医院 (群馬県前橋市)
http://www.maebashi-dent.com/ |
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>> 詳細プロフィール |
この記事の監修者
Hideaki Hirooka
弘岡 英明
歯科医師、日本歯周病学会指導医、日本臨床歯周病学会指導医
スウェーデンデンタルセンター弘岡歯科医院 (千代田区内幸町)
http://www.sweden-dc.com/ |
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>> 詳細プロフィール |
公開日:2017年●月●日